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コラム:医療法人の相続事業承継対策

医療法人の相続事業承継対策

「相続対策」は、「財産承継対策」と「事業承継対策」の2つのテーマがあり、
いずれか一方ではなく、どちらも重要であるということは、
医療法人であっても株式会社と異なることはありません。

しかし、医療法人と株式会社とは、「法人の機関」や「持分(株式)についての権利」が異なるため、制度上の特殊性を考慮してこれらの検討を行う必要があります。


「子供に会社の財産と経営の権利を承継させる」ことを例にご説明しましょう。

論点をわかりやすくするため、他の子供(推定相続人)との関係などは考慮外とし、「権利上の問題」だけに着目します。


株式会社の場合には、「子供に株式を全部承継して、子供が代表者に就任する」ことにより、財産と事業についての権利を子供に承継させることができます。

しかし、医療法人の場合、これと同じことを単純に当てはめた、
「子供に出資持分を全部承継して、子供が理事長に就任する」
ということでは、「財産」はともかく、「事業」の承継が出来たとはいえません。

医療法人の社員総会は「1社員1議決権」により運営されますから、出資持分と議決権はリンクしません。
出資持分の承継だけではなく、既存社員の入退社手続きによって、社員総会の過半数議決権を確保しなければなりません。また、代表権を有する理事長も、原則として医師又は歯科医師しか就任できません。ただし、一定の場合には、医師等でなくても理事長になることができます。

 

上記は単なる一例です。他の相続人がいる場合はもちろん、社員や出資者が複数いる場合には、これらの者との関係も考慮した検討を行う必要があります。また、子供がいない場合や、医師でない場合には、第三者に経営を譲るというケースも考えられます。

 

医療法人は、特に「社員(権)」「出資持分」「代表者」の3点について株式会社と異なる特徴を持っています。これを意識しないで進めると、後で取り返しのつかない、もしくは、取り返しの難しい事態を引き起こしてしまう可能性があります。


したがって、医療法人では、

 ・子供がいるかどうか、いる場合には2人以上いるかどうか
 ・後継者は決まっているか、子供がいる場合に、子供を後継者にするかどうか
 ・子供が医師資格を有しているか
 ・医療法人が保有する財産と、その他の財産のバランスはどの程度か
 ・医療法人の社員構成、出資者構成はどのようになっているか etc.


という項目について、個別具体的に検討を行う必要があります。

持分の定めのない医療法人への移行

経過措置型医療法人は、一定の手続きを経て、持分の定めのない医療法人に移行することができます。

ある意味で、医業の永続性確保、相続・事業承継対策の根本的な解決の切り札となる可能性を持つのですが、同時に、出資持分に係る財産権を放棄し、後戻りができない一方通行のスキームであることへの十分なご理解、出資者全員から同意を得ることのほか、移行時の課税関係の検討など、慎重な準備を要します。

 

当事務所では、持分の定めのない医療法人への移行支援業務をご提供しております。「移行ありき」ではなく、移行の必要性の検討から、スケジュールの策定支援、問題点の検討・対策検討など、総合的観点からのコンサルティングを行いますので、お気軽にご相談ください。

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